第51章 もっと言葉を教えて
私達はようやく動き出し、家へと向かった。晩ご飯どきだからかそこら中の家からいい匂いがする。
「ヘクシュッ」
ああ、寒い。今日ずっと外にいたからなあ。早く帰ってぬくぬくしたーい。
「お前、元旦暇かァ」
「今のところ暇だけど。」
鼻をすすりながら答えると、実弥が言った。
「一日あけとけ。神社で俺は待ってるから、…まあ、なんかに気づいたら来いよ。初詣でもしながら話そうぜ。」
「?????」
私は首を傾げた。
「私がいかなかったらどうするの?」
「諦める」
「…。」
実弥から感じ取れる感情が全くわからなかった。
今まで、向けられたことのないような感情。
「うーん、実弥の本心は分かったってことでいいのかなあ。私が馬鹿だから分かってないだけ?んん??」
「……。」
頭を悩ませる私に実弥はフッと微笑んだ。
「まあ、わからなくてもいい。」
「え、でも、元旦まであと数日だよ!?」
実弥はいいんだ、と繰り返した。
「……そういうところですぞ。」
私はむすっとして頬を膨らませた。
こういう優しいところが、きっと私をダメにするんだ。