第51章 もっと言葉を教えて
説明し終わった後、実弥はポカンとしていた。
「おいおい、そんなことってあるのかよ…。」
「あったんだもん。しょうがないじゃん。あー、元に戻れてよかったあ!実弥の本心も聞けたし、今日は素敵な一日だねえ。」
私が笑いかけると、実弥は首の後ろを手で撫でた。
すると、ほんのりと…。
「…?実弥、なんか…?」
「ああっ!?」
気配でわかっても本心はわからない。今回はそれがはっきりとわかった。
「今まで感じたことのない気配がする。何だろ。」
「ったくお前は頭が花畑かァ…。あー、クソッ。」
実弥はまた顔を背けた。突然のことに驚いていると、耳が赤くなっていることに気づいた。
そして、何だろうこれ。緊張でもなく、恥ずかしさでもなく、これは…。
(私も…この感じ…)
知っている。私はこの感情の名前を知っている。
「やめろ。」
「うっ。」
また頬を引っ張られた。痛い痛い。
「気配を探るんじゃねえ。やめろ。」
「い、イヒャイ。」
「あーっくそ、何で今戻ったんだよ、くそっ。」
罵倒のボキャブラリーがどんどん減っていく。
「……もう、何なの?」
私が聞くと、実弥はキッと私を睨んだ。
「こっぱずかしいこと散々言っただろうが!!!もう言わねえぞッ!!!」
「え?ええ??こっぱずかしい??」
「うるせええ!!!」
「ちょ、待って…ッ、わぷ!!」
暗い中だからか、私から離れようとする実弥を追いかけることに意識を集中させていたからか足元の段差に気づかず、転んでしまった。
「いったあー…」
「おい!」
実弥が駆け寄ってくる。
「何やってんだよ、どんくせえなあ…」
「……。」
実弥が心配してくれる。こんなに優しいのは。
前世の私じゃなくて、今の私を心配してくれているってことが、さっき理解することができた。
「あ?何笑ってんだあ。」
「えへへ、私の幼なじみは優しいなあって。」
私がそう言うと、実弥は呆れたように眉を下げた。