第51章 もっと言葉を教えて
「私のこと、どう思ってるのかなって…」
言うと同時にホッとした。ずっと悩んでいたことが案外すらすらと言えた。
あぁ、でも突然だったかな。困ってるかな。
「…そりゃどういう意味だァ」
実弥が真顔で言う。
さっきまで少し怒ったみたいだったけど、落ち着いたらしい。
「お前は俺に何て言って欲しいんだ」
ふんわりと風が吹いた。
ほんの一瞬だけ、前世の…不死川くんの姿が見えた。
私もまるで前世に戻った気分だった。
あの頃、不死川くんがずいぶんと小さく見えました。私より体は大きかったけれど、まだまだ若い子でした。
何でそんな気分になったのだろうか。わからないけれど、思い出した、
隣に立って、彼が怒りながらも…どこかで私を尊敬してくれていて。私が新たな彼が巻き起こす風に戸惑いながらも、不死川くんに接する。
そんな関係が……。
もう、戻ってこないような……。
「本心が知りたい。実弥の本心が。どんな答えも私は期待しない。」
「わかった。」
実弥が答えた。
「…つっても、俺が帰らねえと母ちゃん困るんだ。いったん帰るわ。」
「あ、うん。そうだね。」
「お前もいったん帰れ。そんでもう一回出てこい。俺と一緒だって言えば家の人も安心すんだろ。」
ぶっきらぼうながらも優しい。
その隣を歩きながら、私はまた、懐かしい前世を思い出した。