第5章 夢見る
私は目を開けた。
見慣れない白いカーテンと天井。起き上がった。
「…?」
カーテンを開けると、向こう側に宇随先輩と保健室の先生がいた。
「霧雨…!」
「霧雨さん、良かった。気分はどうです?」
私は瞬きを繰り返した。まだふらふらする。ずきずき頭が痛む。
宇随先輩改め宇随くんが目の前にいる。
………まさか、そんな。
彼を忘れていたとは。
「派手にビビったぜ、急に倒れるからよ。お前治ってねーのに学校来んなよ。休めよ。」
「………」
呆気にとられて何も話せない。馬鹿な。そんな。嘘。何で。信じられない。
「…霧雨さん、もう帰った方がいいわ。熱はないみたいだけど…。先生送っていきましょうか?」
「あ、いえ、……ぼーっとしちゃっただけで…帰れます」
私はやっとのことで声を出した。
「先生、俺送ってくんで」
宇随先輩の言葉にまた何も言えなくなった。
先輩が無理矢理もって返してくれなかったので鞄をもたせてしまった。
「…先輩、あの…」
「何だ?」
「……」
聞きたいけど…安易に聞ける内容でもない。
「あー、その、…ご迷惑をおかけしまして…」
「気にすんな気にすんな。お前は休みやがれ。」
前世を信じますか、とか。
聞けたもんじゃない。
「え、っと……う、宇随先輩、忍者になりたい願望とか持ってませんか」
咄嗟に聞けたのはそれだけ。
遠回しに行こうとおもったがダイレクトすぎた。
ていうか私頭のおかしい奴じゃない!?
「忍者か…いいなド派手で。」
あ、答えてくれた。やった、こいつもバカで頭おかしい。
「あと……お嫁さんは三人欲しい、とか」
私が聞くと宇随先輩は後頭部をかきむしった。何事かと驚いていると、宇随先輩は大きなため息のあとに言った。
「そりゃ前世のはなしだろーが」
私はその言葉に目が点になる。
宇随くんはニヤリと笑った。
「思い出してくれましたかねぇ、霧雨さん?」
私は嬉しさのあまり跳びはねた。