第50章 本心
「霧雨さんは、無意識ながらもそのわからない問題に取りかかろうとしているんじゃないかな。」
桜くんが言う。
「だからわかる問題を消してしまったんだ。第六感をね。第六感というのは簡単な問題なんだ。何となくの雰囲気なら僕だって察することができる。霧雨さんは感情や気持ちを読み取れるようだけど。
けれど、人類が読心術を使えないように本心はわからない。霧雨さんは誕生日サプライズがあることはわかっても、どのような内容のサプライズなのかはわからない。ケーキがあるのか、プレゼントがあるのかとか、具体的なことは。」
確かにそうだ。私の気配を感じる特技はさほど便利なものでもない。
「でもね、誕生日サプライズがあるってことがわかればもうそれで良いだろう?内容はともかく、あること事態が霧雨さんには重要なのだから。」
そうだ。桜くんの言う通りだ。
「だから、霧雨さんは気配以外のことがわからないんだ。そもそもわかろうとしてないんだ。」
「なるほど!!」
「恐らく、霧雨さんは実弥くんの本心が知りたいと思ったから第六感を無意識に削除したんじゃない?メンタルがそういった部分に響くのは良くある話だからね。」
桜くんの話には説得力があった。私は頷き、彼に尋ねた。
「じゃあどうしたら本心がわかるのかな」
「わからないよ、他人の本心なんて」
桜くんが強めの口調で言った。
「わかる術なんてない」
その言葉の裏に何か含まれているような気がしたが、さっぱわからない。
「言葉にするしかないんだ。本心なんて。」
「…」
「実弥くんの本心を聞き出すしかないんだろうね。」
桜くんはそうアドバイスをくれた。そして、別れ際に言った。
「彼はわかりやすいと思うけれど。僕でもだいたい察したよ。何かあったら報告頼みましたゾー。」
???
さっぱわからない。