第50章 本心
迷惑をかけていたこと。実弥は前世の記憶を引きずっていたこと。
だから、距離を置いていること。
「それでしかないじゃん。」
「ええ!?」
「バッッカなの?????」
桜くんはじとっと睨んできた。
「ていうか、その…何なの、気配でわかんないことって。霧雨さんでもわかんないことあるんだ?」
「あるよ。……気配に出さないで、心に秘めたことくらいあるんじゃないかな。私にはそれが全くわかんないんだけど。」
「はん、霧雨さんは第六感しかないからねぇ。」
「私には何が足りないのかなあ…」
「わかりきってるでしょ。空気読めてないだけじゃん?」
…いちいち彼の言葉は胸に突き刺さる。ていうかえぐれる。
「気配を探るなんてすごいよ?本当すごいと思うけどさ。でも例えば、僕が霧雨さんの誕生日にサプライズしようとしてたけど、霧雨さんにはそれがまるわかりってことでしょ?」
「うん…そうだね。それくらいならわかっちゃうかも。」
「場の雰囲気壊しちゃうでしょ、わかりきったサプライズで喜んでもらうことは不可能だ。霧雨さん、女優向いてなさそーだし。」
確かに。私は素直にうなずいた。
「人ってわからないことよりわかることを優先するんだよね。わからない問題よりわかる問題を優先して解くみたいに。」
「わかる問題が気配ってこと?」
「そ。わからない問題は…霧雨さんの言葉を借りるなら、気配では察することのできない心に秘めたことになる。」
そこで私は何となくだが納得した。
「そうか。私はわかる問題だけを見ていたから、わからない問題がさっぱりってこと?」
「そー。昔は氷雨さんがよく怒ってたよね。あんまし心に響いてなかったみたいだったけど。」
……あれ?そうだっけ?氷雨くん、そんなこと言ってた??