第50章 本心
「ねえ、あんたたち。」
帰り道を歩いていると声をかけられ、ギョッとして二人で振り返る。背後の気配に全く気づかなかった。
私たちの目の前には桜くんがいた。実弥がなぜここにいるのかとびっくりしている様子が表情からわかった。
「桜くんは私の裏の家に住んでるの」
耳打ちすると、実弥は溢れんばかりに目を見開いた。
「どうかしたの、かわいい桜くん。」
桜くんも冬休みなのだろう。小学生は部活もないだろうから、お散歩でもしていたのだろうか。
「ううん。なんか、霧雨さんがおどおどしてたからいじめられてるのかと思って。」
「なッ…いじめてねえよ。」
「はん、そんなコワモテで言われてもねえ。」
桜くんがむすっとした表情で言う。
「霧雨さんをいじめたら雫波紋突きだかんね。」
それを聞いて、実弥はギョッとしていた。
「み、水柱だったのか…!!」
「そうだけど?」
「水の呼吸にはろくなやつがいねェ」
実弥が小声で呟く。
「で?本当に虐められてない?大丈夫なの?」
「うん、この子は人をいじめたりしないよ〜。」
「霧雨さんが言うなら信じてあげてもいいかなあ?」
「クソガキ…!!」
実弥が怒って一歩前に出る。桜くんは一足早く逃げて私に抱きついてきた。
「霧雨さん、この人怖い〜!」
「もー。小学生虐めちゃダメだよ。」
「おいテメエ!!そいつから離れろ!!ぶん投げてやる!!!」
桜くんはぎゅうっと私に抱きついてくる。その顔を見た実弥がなぜか怒る。私には見えなかったけど、どんな顔をしてたのかなあ。
「ほらほら、桜くん怖がってるし。」
「怖がってねえよ!!お前気配でわかってんだろうが!!!」
そう言われて、ギクッとした。
「霧雨さん?」
桜くんが固まって私に首を傾げる。
「霧雨さん、僕の家くる??」
「え」
「こんな人の近くにいたら物騒さがウツルヨ。」
「はあ!!??おい、テメエ!まじふざけんな!!あとそいつを連れて行こうとすんじゃねえ!!」
ギャンギャンと二人の攻防を見ていたが、最終的には桜くんの巧みな話術で丸み込まれた実弥が私の家に伝言をすると言う約束までさせられていた。