第50章 本心
翌朝。
目覚めた私は、ベッドから起き上がって、違和感を覚えた。
何だろう。
何なんだろう。この感じ。
コン、と音がしてびっくりした。
おばあちゃんだ。
「おはよう。今日は部活でしょう?」
「…うん。」
「はやく準備しないとね。」
そう言って出て行った。確かに、悠長にしてられない時間だ。
私は再び考え込んだ。
今日は吹奏楽部に顔を出した。
けれど、私は失敗ばかりしてしまった。
壁や机に体をぶつけてしまい、譜面台を倒し、楽譜を床にぶちまけ…。
「…キリキリちゃん、どないしたんよ。」
楽譜を拾ってくれたアマモリくんに心配されたが、私は何とも言えなかった。
うう、なんて情けないんだ。明日には元に戻ってるのかなあ、私…。
部活終わりには半泣きで楽器を片付けた。
「おい」
「おわッ」
声をかけられて驚いて振り返った。そこには帰り支度を終えた実弥がいた。
「…何驚いてんだ。お得意の気配察知はどうしたァ。」
「ええ、あっ、たまたま。たまたま気づかなかった…ッス。はい。」
どんどん声がしりすぼみになってしまう。実弥の視線が痛い、超絶に。
「たまたまだァ?今日もなんからしくねえことばかりしやがって。具合悪いのかよ。」
「いや、悪くないよ。絶好調…!」
私は逃げるようにそそくさと帰ろうとしたが、いかんせん帰り道が同じなのだ。逃げられぬ。
しかし、迷惑はかけまいとしているのにどうしてこうも迷惑ばかりかけるのだろうか。意識していなかっただけで、私はこんなにも迷惑をかけていたのだろうか。