第49章 愚者
まあ、結論を言えば私が勝ったのだが。
「なぜだ。」
「なぜだろう。」
まあ、言わせてもらえば次の一手が読めるから。ここに駒を動かされたら嫌なんだな、とか。そういうのが気配でわかってしまう。将棋の極意はもちろん理解している。でも気配が一役買っているのは確かだ。
「ふふ、肉まん奢ってもらうからね。」
「…かまわんが、学園から離れたコンビニにしろ。見つかりたくはない。」
負けず嫌いで、真面目な子。
私は冨岡くんのことを本当によく理解できるようになったと思う。
少し遠く離れたコンビニまで向かった。
そこで肉まんを買ってもらって、外の車止めに腰掛けて頬張った。冨岡くんはおでんを自分で買っていた。もちろん大根。
「寒い中で食べる肉まんって最高だと思う。」
「自分で買ったらもっと美味しいだろうな。」
拗ねたように言われ、苦笑した。
「でも負けたのは冨岡くんでしょ?」
「……次こそ勝つ。その時はお前が奢れ。」
「いいよ。勝てたら、だからね。」
私がそう言うと彼はムスッとしながら大根を頬張った。
「霧雨は何でもできるな。」
「ん?」
「運動も、勉強も、将棋も。」
「そんなことを言ったら君は顔がいいじゃない。」
「…関係あるか?」
「あるよ。それだけで君は全宇宙の宝だよ。」
そう言うと冨岡くんが首を傾げたので私は力説した。
「綺麗な顔で生まれたものの素晴らしさを理解していないの?私の癒しになるし、私の生きる糧になるし、私の目が幸せだし、前私が喜ぶんだよ??」
「霧雨の得でしかないのか。」
冨岡くんは更に首を傾げた。