第47章 真冬
漫画みたいなこけ方をした後に教室に戻るのは憂鬱だったが、戻れば皆が大丈夫かと心配してくれたし、笑われなくて安心した。まあ、あんなに血だらけになった人間を笑うような子はいないか。
「もうお昼休みよ。全然戻ってこないから心配したわ。」
「なかなか血が止まらなかったし、痛くて動けなかったの。」
「不死川くんが心配してたわよ。」
「えっ」
思わぬ名前に顔が赤くなっていくのがわかる。
昨日のあの言葉が自然と再生される。
「まあ、そんなに照れちゃって!!」
「う、嘘でしょ。そんなことないでしょ!」
「本当よ?教室の前通る時にチラチラ見てたし、アマモリくんにわざわざ確認してたの聞いちゃったんだから。」
カナエは嘘をついていない。それはわかる。
「ほんまに焦ったで。急にくるから。」
「アマモリくん」
勝手に話に割り込んできた。
彼はなかなかに謎な人物だ。前世で私の刀鍛冶だった。今は良き友達だけど、なぜかジッと私の方を時折睨んできたり、優鈴のいたあの不可思議な夜に何でか模造刀を持っていたり。よくわからない所が多い。
「ほんまに不死川はキリキリちゃんが大切なんやな!!」
「本当よねえ。」
一時期仲が悪いように見えたカナエとアマモリくんは今ではそんなこともない。
「まあ、血まみれの人がいたらそうでしょ。」
「えー、でもわざわざ隣のクラスにはこおへんやろ。」
そんなの知るか。私は隣のクラスの誰かが血まみれになった経験がないんだ。というか私なら行くよ、心配だもん。
「でもほんまに心配しとるんちゃう?会いに行ったらええやん。」
会う?実弥に??
『お前のこと好きだし』
「けっこうですっ!!!!!」
記憶の声をかき消すように叫ぶと教室がしん、となった。皆の視線が私に集まっているのがわかる。
「……。」
私は真っ赤になって机に突っ伏し、クラス中の笑いの的となった。