第47章 真冬
持久走は嫌いじゃない。運動は好きな方だと思う。だから、学校の外に出て走る外周だってきもちよくて、けっこう楽しく走っていたんだけど。
見上げる空は青い。
空の色だけは前世と全く変わらないなあ。
「霧雨さん、大丈夫…?」
「もう少しで先生来るからね!!」
空から隕石が降ってくればいいのに。そうしたら惨めな私は今すぐここから消えてしまえる…。
まさか。持久走でずっこけるだなんて。
私の両膝は重症だ。膝小僧からダラダラと血が流れていて、とっさにアスファルトについた左の手のひらも出血中である。左手では支えきれず、顔面とアスファルトがキスすることになり、左頬がとても痛い。
というわけで、血だらけなのだ。地面のわきでちょこんと座り、私のそばを走っていた子たちに心配されながら先生を待っている状態だ。
先生はカナエが呼びにいってくれている。いや、見事なこけっぷりだったよ。我ながらね。
血だらけの私を見て一般の通行人も足を止めて心配してくれた。
「近くの公園に水道があるから、洗った方がいいよ。」
そのうちの一人にそう言われ、そこまで肩を借りた。
「すみません…。」
「大丈夫だよ。こんなにひどい怪我なのに泣かないで偉いね。」
正直痛いけれど、痛みには慣れている。ここで泣いたら惨めさに拍車がかかる。
水道で血を洗い流していると、カナエが先生を連れてやってきた。
「霧雨!」
「ー!」
一般の人と先生が少し話して、私は先生の肩を借りて学校に帰った。付き添ってくれたみんなには先に帰ってもらった。
時間が経って、折角洗ったのにまた血が流れた。
帰った頃にはもう授業が終わっていて、何なら次のクラスがグラウンドに出ていた。
「あ、せんせー」
「ん?なにやってんの」
「うわ、血まみれじゃん」
あれは隣のクラス…実弥と冨岡くんがいるはずだ。嫌だなあ。保健室に行くんだろうけど、それならグラウンドの側を通るから見られてしまう。