第46章 好意
ま、まあ実弥はクラスが違うもんね。あるのかもしれない。私は小テストの見直しでもやっておこうかな。うん。
無言でお互い部屋のローテーブルに座る。
実弥はじっとしていた。いや宿題やらんかい。
私は鞄から小テストを引っ張り出す。
「おい、宿題やんのか。」
「いや、私のクラスは出てないから小テストの見直しでも、と。」
「俺のクラスも宿題はねえよ。気配でわかんねのか。」
「…ッスよね!!」
うん、知ってた。でもね。君の嘘を信じたんじゃい。のっかってこいよ。
「で、でも、やりたいからやるよ。実弥もやったら?今ならわたくし英語教え放題ですぞ!!」
「あほ」
ぱこん、と柔らかいもので叩かれた。私の小テストが入っていたファイルだ。いつの間に奪ったんだやるじゃないか。
「俺の言いたいことがわかんねえのか」
「……」
「頭がお花畑のお前でもわかるよなァ」
失礼な。
「…わかるよ。」
「だな。」
私は認めた。実弥は次の瞬間、大きく頭を下げた。
「悪かった」
「はい?????」
わーーこんなに頭を下げるコイツ初めてー動画撮りたーー……く、ないです。
「つーーか、まずはありがとうか?よくわかんねえ、くそ」
「は???は???????????」
わけがわからない。何言ってんだコイツ。
「聞きたくないことを聞き出しちまって悪いって言うのと、話してくれてサンキューっつーのを言おうとしたんだけどよ、矛盾してるよなァ、俺」
「えっ、えっ???」
本当にわからない。何を言っているんだ。何で私は謝罪されて感謝されているんだ??????????
「えっ。あの、それだけ?」
「あー……俺の謝罪じゃたりねえか。そうだよな。」
「いやいやいやいやいや!!」
私はしっちゃかめっちゃかに言ってやった。
「私を殴るとか罵倒するとかないの!?」
「はあ!?」
「怒ってるんでしょ!?わかってるんだから。わかってるんだからね!!」
実弥から怒りの気配がしていない。
わかっている。…わかっている、だから信じられない。
「嘘つかないでよ」
私の声は、すごく弱弱しかった。