第46章 好意
嘘でしょ??
最寄駅も一緒な時点でちょっとおかしいなあとは思ってたけど。
「霧雨さん、裏の家だったの!?」
桜くんがびっくりしていた。私の家の、裏の家は何と彼の家だった。
「えええええええこんなことある??私はずっとこんなにかわいい桜くんを見逃していたって言うの!?」
「ちょ、そこなの??」
「そこでしょ!!」
むう、と桜くんは頬を膨らませる。
「ま。僕がかわいいのはわかりきったことだけどね!」
「うんうん。」
「褒めたいなら褒めていいんだよ。喜びたまえ。」
えっへんと胸を張る桜くん。
「ああ、そうだ。こんなに家が近いなら中学も一緒だったりするのかな?そうだったら毎日桜くんを愛でられるのに。」
「残念ながら、僕はまだ小学生でーす。前世と比べて歳の差が開いたみたいだ。小6なんで。」
「ッチ」
「舌打ちはやめなさい」
桜くんはぷっと吹き出す。
「まあ、こんな面白い霧雨さんならうまくやっていけそうかな。」
「え?」
「前世は意味深なヒトって思ってたけど、これなら仲良くできソー。前世と違って頼りにはならなさそうだけど。」
「いやあ、それほどでも…」
「待った。何で照れてんの?」
私達は長いこと桜くんの家の前で話していたが、しばらくして別れた。
自分の部屋に戻っても桜くんのかわいさにほわほわしていると、スマホにメッセージがきた。
さあっと血の気が引いていく。
『今からそっちに行く』
実弥だった。
あの秘密を話したのはさっきの話だ。ずいぶんと無茶を言う。
私は桜くんのかわいさを思い出すのに必死なんだ。じゃまをしないでくれ。
ゴロゴロと自室のフローリングを転がっていると、おばあちゃんが部屋に入ってきた。
「実弥くんがきてるよ」
「え」
優しく微笑むおばあちゃんの後ろから、実弥が顔を出した。
「お邪魔します。」
「今日は不死川さんみんなお出かけなんですって。晩ご飯食べていくから。」
「へえ」
もうそれしか言えなかった。
実弥は晩ご飯ができるまで勉強をすると言って、私の部屋で一緒にやればとおばあちゃんが言い、私の部屋にどっかりと座った。
嘘つけよ。宿題なんて出てないだろ。お前はあの話しにきたんだろうが。