第45章 白日に
「な、ならよ…鬼として…ずっとコソコソ生きていたってことか?」
「そうです。」
宇髄くんの問いに答えたのは、私ではなくしのぶちゃんだった。
「私は鬼になった霧雨さんに会ったことがあります。…お館様に報告しましたが、承知されていました。」
彼女が嘘をつくはずもない。
みな、黙った。
「僕が悪いんだ。」
しかし、桜くんが言った。
「このことに関しては僕が全ての原因だ。鬼殺隊を裏切ったことはわかっている。」
桜くんが続ける。
「僕らは、歴代最少人数の柱で頼りのない柱だと言われていた。まあ間違ってはいなかったけどね。だから僕らが何かをするより、次世代のために何かを残したかったんだ。それを、霧雨さん一人に背負わせてしまった。」
「…桜くん」
「霧雨さんが責められる筋合いはない。責めるのなら僕を責めてくれ。」
「バカ」
天晴先輩がそれに突っかかる。
「言ったでしょ。共犯だって。霧雨ちゃんだってそんなことを怖がっていたらあの時に飲んでないわよ。」
「そうだよ、桜くん。」
それでも顔をあげない桜くん。
「ハカナはすごかったじゃないか。鬼になる薬を見事に作り上げたのだから。」
「でも、氷雨さんは」
「いいんだよ。死を待つ時間というのも楽しかった。」
私達は誰も彼を責めない。やっと桜くんが顔をあげた。
「……ったく、本当にお人好しだね。」
素直じゃないけれど、少し耳が赤くて照れている気配がした。
「でも、僕らだけで平和に終わるわけにもいかないでしょ?」
そして話を聞いていた元柱たちに問いかけた。
「で、君たちはどう思ったの。」
無反応だった。
「霧雨さんの死の真相を知りたいって言ったのは君たちじゃない。なんか言うことあるでしょ?」
「桜くん」
「…」
「もういいよ。聞きたいって言ってくれただけで、どうしたいとかはないんだから。」
「人が話したくないこと聞き出して、無言は無いと思うけどね。」
「よしなさいよ、桜」
納得できていないようだったけれど、桜くんは黙った。