第45章 白日に
「この三人の中で、鬼になることができたのは私だけだった。」
ここからは、他の三人も知らないことだ。
「私は、桜くんが死んでから…この秘密を一人で背負っていくことに自信がなかった。だから、隊士や隠の記録も何もかも、あの日の分を消した。あの日自体をなかったことにした。」
私はそっと手もとに視線を下ろした。
「体に異変が現れたのは、不死川くんが柱になってからだった。私は…ほんの少しの軽い傷なら勝手に治っていたし、お腹が空いた時に人を見ると…おいしそうって思ったり。けど、普通の人間としての生活に支障はなかった。
だけど、本部にはバレていた。」
一人になって、私はやっと気づいた。
人の死は悲しいもので。
氷雨くんが、安城殿が、桜くんが。どれだけ私にとって大切な存在だったのか。
悲しい。死は悲しい。みんな、こんな思いで闘っていたのか。そう気づいた時、私は虚しくて、それでも相変わらず笑っていた。
「お館様が、霧雨を討つことを命じられた。」
そこで冨岡くんが口を開いた。
「俺が刺した。」
全員が目を見開く。冨岡くんが言い切った。
「そうだね。冨岡くんに私は刺された。」
「ッ!?どういうことなの?もう何なんだか…。」
カナエが頭を抱える。
「でも、冨岡くんは私の頸を斬らなかった。その後、運悪く上弦と対峙することになって私は死んだ。人間の私は。」
「じゃあ、あんたの死体が消えたのは。」
「…信頼のおける者たちと打ち合わせをしていた。もし私が死んだとなれば、烏を飛ばすから死体を回収して欲しいと。…遺品までは言っていなかったんだけど、ご親切に回収してくれた。
…これで全て話した。」
私はずっと隠していた秘密を言い終え、紅茶を口にした。
ああ、氷雨くんの紅茶はこんな時でもおいしい。