第43章 消えた一日
皆家の広さに驚いてはしゃいでいたが、リビングに入ると一気に静かになった。
いまだにあのやりとりが続いていたのだ。
「氷雨さん、あんたもニコニコしていちいちむかつくんだよ。バッカじゃないの。笑ってたら朗らかに見えると思ってんの?うっとうしいから間に入らないでよ。」
「そうよ!この子と私の話なんだから!!」
「まあまあまあ」
私はうんざりして、ため息をついた。
「あっ!!!のっ!!!」
今日一番の大声を出すと、三人とも止まった。
「皆さんご到着です。」
「…わあ、いなくなったことに全然気づかなかった。あいっかわらず影の薄い人だね霧雨さんは。」
私は無視して席についた。
それにみんなも続く。
「えー、お見苦しいところを見せました。」
氷雨くんが少し頬を赤らめていたが、あの二人はまだ睨み合っていた。
「お招きいただき感謝する。」
「これ、お菓子です。よかったら。」
悲鳴嶼先輩が挨拶をし、カナエが手土産を渡す。
「はー、知ってる顔もいるけど知らない顔もいるね。柱ってこんなにたくさん増えたの?」
「私たちの時が人手不足すぎたの」
あの子がこそこそと聞いてきたので答えた。
「すんませんね。今回、霧雨の死の真相を知るってだけなのに何でこんなにおおがかりになっちまって。」
宇髄先輩がすみませんとか思っていないような態度で言う。
「霧雨さんの秘密は僕らの秘密だからね。一人で話させるわけにはいかないんだよ。」
「おい霧雨、何でガキがいるんだ」
「失礼だな!!僕は13歳だぞ!!
あの子が怒る。
大きくてつぶらな瞳。ふわふわの髪。華奢な線の細い体。
どう見たって小学生…贔屓目に見ても中学年。それに、女の子にも見えた。
宇髄先輩を無理に否定もできない。
あの子は天晴先輩がわざとらしく吹き出すのを、恐ろしい眼力で睨みつけていた。