第43章 消えた一日
その後、お互いに自己紹介をした。私はみんな知っているはずなのになぜか改ってしなくてはならず、ほんの少し恥ずかしかった。
「僕は桜ハカナ。」
「サクラ?名前まで可愛いかよ。」
「何なの…?お前さっきからうるさいんだけど。」
「まあまあ。」
私は桜くんをなだめた。彼の隣に座ってしまったからには彼のなだめ役にならなくてはならない。
「ったく、急に呼ばれて何なのって腹が立ったよ。早く話して早く帰りたいよ。」
…さっき緊張してるとか言ってなかったっけ?
そうして弁慶になって自分を強く見せるようにするところが桜くんにはあるんだけど。
「うん。時間ももったいないし話そうか。あ。ちょっと待ってください。そうそう。この紅茶ね、すごくミルクが合うんだよ。本当だから。いやあ、私とした事が客人のお茶を注ぎ忘れるとは。カップの半分まで注ぐのがこつでしてね。ここでひとまず香りを楽しんで…。」
「はいはい、黙ってお茶の準備しておいてちょうだい。私はコイツを手伝うから、二人でお願い。」
「え」
「は」
桜くんが一気に緊張感を漂よわせる。そして、救いの視線を向けてきたものだからこれはもう、私が話すしかないらしい。
「ええっと。私の死に方が不自然だったってことだよね。あんなことになったのは、私が死んだ日から丁度十年前の日にさかのぼらないといけないの。」
「あの、期録が一切残っていなかった日のことですね。」
しのぶが言う。
「ああ、消したからね。僕たちで。」
桜くんがえらそうに話す。…調子いいなあ。
「あの計画の発案者は僕だった。」
桜くんが懐かしい昔の話を始めた。
お茶の用意も終わったところで、私たちは過去について振り返った。