第40章 泥舟
「私、話してもいい、って思います。」
氷雨くんが目を見開く。
「話したら、わかってくれるかもしれない…皆なら」
「…何を言っているのかわかっていますか」
「わかっています。ですが今更です。この秘密は、本部にバレていた。」
私は小さく息を吐いた。
「もはや、話すべきかと。」
無表情に告げた。もう諦めのようなものがあった。
どうしようもないくらい、私は無感情になっていた。
「……。わかりました。」
「…あの日、このことを隠そうと決めたのはあなたでした。覚えていらっしゃいますか。」
「…はい。」
「賢明な判断だったと、私は今でも思っていますよ。」
氷雨くんはにこりと頬笑んだ。
しかし、一つ問題があった。この秘密のキーパーソンとなる人物がいないこと。全ての始まりはあの子だった。
「この秘密を共有したのはあの時代の四人の柱たちです。そのうち二人はここにいますが、あとの二人は?」
「…安城天晴は知っています。話せばわかってくれるでしょう。」
「ふむ。あの子だけですか。」
氷雨くんも気がかりなようだった。
「そちらは心配いりません。私が探しましょう。」
「探せるのですか。」
「あなただって、木谷を見つけたのでしょう。」
氷雨くんがクスクス笑った。
「ああ、不死川くん。置いてけぼりですまないね。」
「いいえ」
「私たちはこの秘密を話してもかまわないと思っている。けれど、当時の柱たちの意見もきかなくてはならない。四人中三人は所在が知れているのだけれど、どうもあと一人が見つかっていない。彼を見つけるまで待っていてほしい。彼がいなくては話ができない。見つけて説得する。約束しよう。」
氷雨くんの熱心な語りように、実弥はただ頷いた。