第40章 泥舟
だいぶ長居したので、そろそろ帰ろうかという時間になった。
…思えば、氷雨くんの家族には会わなかったな。いないのかな。
「では、天晴のことは頼みました。私が賛同していると言えば納得するでしょう。」
「はい。」
最後にそう言葉を交わして、私たちは家から出た。
帰り道、実弥がつぶやいた。
「すげえ大事になっちまった。」
「……。」
それには答えられなかった。
「悪い。氷雨さんにもお前にも負担かけちまった。」
「いいんだよ。」
私は頬笑んだ。
「ねえ実弥」
「あ?」
「きっと、全てを知ってたら君は私を許さないだろうと思うんだ。」
「…?」
「秘密を貫き通せないなら最初から秘密なんてない方がきっと良い。」
実弥がわけがわからないと私に言う。
「ごめんね」
私は謝った。
何に対しての謝罪なのかいまいちわからなかった。
秘密にしていたけれど、結局はバレてしまった。折角他の三人が隠してくれたのに。馬鹿みたいに生残った私のせいでバレてしまった。
これが、謝らずにいらるものか。