第39章 家族
どうしよう。私は葉書を前に頭を抱えた。
葉書には住所が書いてあるけれど、ずいぶん前のものみたいだし、まだここにいるのかも危うい。
『寒くなりましたので、どうか、お体に気をつけて』
葉書には短い文章でそう書いてあるだけだった。
誰かに相談するにも話が重い。
私はどうしようかと悩んだまま、登校した。
学園はいつも騒がしい。
今日も最高に賑やかな一日になりそうだ。
現に、授業を終えて部活が始まって皆元気よく楽器を吹いている。
今日は吹奏楽部に顔を出した。
「お前、何か元気ないな。」
目ざといのは実弥だ。
私は構えた楽器を吹こうとして、やめた。
「あの箱の送り主、前世と同じなら…その、会えるんじゃないかな〜と思って、色々と調べたら住所わかったんだよねえ。」
「ッ、ま、まさか、またノートにびっしり…!!」
「え?あ、いや、はやくにわかったからそんな真面目にやってない…。」
そう言うと、実弥はなぜか安心したように息を吐いた。
「じゃあ会いに行くのかよ。」
「いや、その…。それでどうしようかなって。」
「ああ?」
実弥が眉を潜める。さすがに全部話すのは気が引ける。私もよくわかっていないし。
「いきなり押しかけるのも…って思って。」
「住所わかってんなら手紙でも出したらどうだあ?」
「手紙?」
「ああ。向こうが手紙送りつけてきたんだから、お前も送ればいいだろうが。」
…なるほど、ナイスアイディア。
もしかしたら私がバカなのかもしれないが、私は帰宅して早速紙とペンを持った。
が。
内容に困った。
何回も書き直し、なんとか完成した。
切手を買いに行くのも、ポストに投函するのもおばあちゃんに見つかってはいけないと思うとオドオドしてしまって、すっかり変な人になってしまった。
内容は、こんな感じ。
『お久しぶりです。
あの箱をもらった時のことを私はすっかり忘れていましたが、開けることができました。高価なものをどうもありがとうございました。一度お話ししたいのですが、可能でしたら、どうかお時間をいただきたいです。』
…あ。
おばあちゃんにばれたくない一心で宛名も私の名前も書いてないじゃーん!!!と、気づいたのは郵便局を出てからで、中の人に相談したら住所さえ書いてあれば届くとのことだった。私の馬鹿野郎。