第4章 煌めき
私は震える手で電話をかけました。
不死川くんが警察を呼べと言わなかったのは、彼の優しさなのでしょうか。
「お、おぉ、おばさん」
『その声…ちゃん!?どうしたの!?』
私に小さい頃よくしてくれていた親戚に電話をかけた。
「と、とと、父さん、父さん、とと父さんが、」
どもって全く話せなかった。はやくしないと実弥が。でも私の体は震えていて、口も舌もうまく動かせなかった。
『え?兄さんが?……わかった。もう言わなくて良いわ。急いで行くから。十分くらい待ってて。』
「は、はやく、はやく来て、ぉ、おおねが、お願い、します」
おばさんはなんとなく察したようだ。小さい頃から殴られたりしていた私の痣に彼女は敏感だった。
車で十分の距離なのに私は父親から妹とは絶交したから近寄るなと言われた。おばさんは最後に電話番号を渡してくれたけど、父が捨てたんだ。私はゴミ箱をあさって父がいない間に必死にその番号を覚えたんだ。
私の部屋から大きな音がした。
慌てて窓を覗き込む。
「そこどいてろ!!」
実弥にそう言われ咄嗟に身を避けた。
彼の後ろで本棚が倒れていた。
父は相変わらずの様子。
実弥は勢いよくこちらにやって来て、窓とカーテンを閉めた。
父が見えなくなりへたりこむ私。
「誰か呼べたか?」
私はこくこく頷いてスマホを戻した。
「……恐かったな。よく叫んだ。」
実弥はスマホを受け取り私の頭に手を置いた。
聞こえてた。届いてた。
前世とは違う。
「…わ、…私…ま、また…また……こ…こ、殺すかもしれなかった…」
前世の記憶。
10歳の頃か。
あの日も両親が喧嘩していた。
終わってから父親が八つ当たりのつもりか父の書斎まで私を引きずり、そして襲った。
その最中、私は本棚から落ちて顔に当たった一冊の本をつかんだ。
殴った。ひたすら。
何度も。何度も何度も何度も何度も何度も。
父が動かなくなるまで殴った。
結果として私は父を殺した。