第34章 進展
電車を乗り継ぎ、目的の駅に降り立つ。
「…。」
その時、風が吹いた。ちょっと強めの風だった。
私は思わずホームに立ち止まった。
「どうしたァ?」
実弥が私に声をかける。
「優鈴の風だ…!!」
私は懐かしいその感覚に心を躍らせた。
「なあに?もう感じるの?」
「はい!こっちです!近いですよおー!」
「なッ!?ま、待ちなさい!!」
私ははやく会いたくて先頭に立って歩く。
しばらくして、最も気配に近づいた場所に到着した。
「霧雨」
冨岡くんが信じられない、とでも言うように睨んできた。
「ええ、でも、ここにいると思うんだけど…!」
「なんかの間違いじゃねえか?」
「ううん!あそこらへん!!」
私達は病院の前にいた。大きな大学病院だ。私が指さしたのは、三階にある病室の窓。
「そんなところにいて、会えるのか…?」
冨岡くんが聞いてくる。…なんか、捨てられた子犬みたい。
「きっと大丈夫だよー!会わせてくださいってお願いすればいいでしょ!」
「霧雨ちゃん、現実を見てちょうだ…。あ、あら?あの子どこにいったのかしら。さっきまではしゃいでいたわよね…。」
「もう中に入った。不死川が追いかけて行ったぞ。」
「はあ!?ッ、私たちも行きましょう!!」
先陣きった私に皆が続く。
病院の受付の人に声をかけようとして、実弥に止められた。
「あのなあ、。生きてるってわかったんだろ?とりあえずはそれで諦めろや。」
「えっ、やだよ、すぐ近くにいるんだよ?」
「お前の能力は疑っちゃいねえよ。絶対ここにいるんだろうぜ。だからこそ、会うのは難しいよなあ?」
実弥は怒るでもなく、優しく私に話しかけていた。
「お前のその感じるだけの能力じゃあ、入院している理由まではわからねえよな?相入れにくい事情で入院してたらどうするんだ。そこまで踏み込むのか?」
「…ッ!!」
私はそれを聞いて黙り込んでしまった。
実弥は根気強く私の答えを待っているのか、話さなかった。
「でも」
「…」
「優鈴、生き霊にまでなって会いに来てくれたのに」
言い返そうとしたが、それ以上は言えなかった。
私だって、馬鹿じゃない。