第32章 悪霊退散
「刀ならあるで」
独特の訛り。私が声の聞こえた方を振り向く前に、風が吹いた。
「塵旋風・削ぎ」
刀を握り、鬼の首を斬るその姿に私は目を奪われた。
「不死川くん/不死川!?」
突然の登場に私も煉獄くんも目が点になった。
「アホかテメエらあああああああああああああ!!!!!!」
そして、体育館に怒号が響き渡った。
プールからやってきた優鈴はキョトンとして私達を見ていた。カンカンに怒った実弥と平謝りの私達は滑稽に見えただろう。
「なかなか帰らねえからアマモリと様子見に来たらよお…何で鬼とやりあってんだア…?」
「い、いろいろありまして…。ていうか、何で刀なんて持ってるの?銃刀法違反だよ!!」
私は必死に話を逸らそうとした。
「これ模造刀やで。」
「え」
「偽物と本物の区別もつかんの?」
呆れたようにアマモリくんに言われてしまった。腹立つ。黙れ。
「何か、楽しそうなことになってるねえ。」
「優鈴…。」
実弥はその姿を見て、舌打ちをした。
…何で優鈴のことそんなに嫌うんだろう。
でも、今回のことは優鈴が怪しいんだよな…。
「ねえ、優鈴。」
「何?」
「あなたは転校生。そうだよね?」
「はあ?」
優鈴が眉を潜める。何言ってんだコイツと言わんばかりに。
「何で理科室からプールの行き方がわかったの?」
「………。」
「プール、体育館、理科室…この三か所の距離感がどうしてわかったの?」
そこで煉獄くんがハッとした。恐らく、優鈴の迷いのないあの足取りを思い出したのだろう。
「この学園は広い。ほんの数日で土地勘は身につかない。迷子になる子もいるくらいにはね。」
そう。煉獄くんのようにこの学園に来たばかりならば迷わず歩くのは無理だ。優鈴は転校したばかり。それなのに…。