第32章 悪霊退散
私達は慎重に誰にも見つからないように体育館へ向かった。真夜中の学校はなんとも不気味だ。
「…当たり前だが誰もいないな?」
「人間はね…」
「そうか」
煉獄くんがずんずん中に入り、床にお札を置いた。
「これでいいのか?」
彼がそう言うとともに、空気が軽くなっていくのを感じた。私は頷き、彼の元に歩み寄った。
が。
「え」
再び嫌な悪寒が私を襲う。耐えきれなくて、その場にへたりこむ。驚く煉獄くんの背後で、先程置いたお札がびりびりに破れているのを見た。
「煉獄くん、後ろ」
震える声で言った。お札が破れているのを確認した彼は、何やらまずいものを感じ取ったらしい。
「歩けるか、霧雨さん」
「…大丈夫、先に行ってて」
「冗談だろう」
彼はにっこり笑うと、私をかばうように立った。
「ふむ、何となくだが姿が見えるようになった。」
「嘘でしょ…。」
そんな意味のわからないことがあるのか。私は唖然としてその姿を見ていた。
「鬼…?」
その姿。醜さ。
飽きるほどに見てきた。うんざりするほどに斬ってきた。
「の、ようだな。」
怪奇現象の類は血鬼術じゃないかと、幽霊トンネルの事件でそう私は考察した。どうやら当たらずも遠からずのようだ。
「鬼に怯えるなんてあなたらしくもない」
「いやいや、あれはお化けだよ。鬼なんているはずないじゃん!今令和だよ!?」
「しかし、やるしかないだろうな!」
煉獄くんはそう言って立ち向かおうとするのを私は必死に止めた。
「バカ!!刀もないのにどうするの!!!」
「しかし、鬼を見過ごすわけにも…!!!」
「わー!!バカバカ!!あれはお化けなの!!鬼っぽいけどお化けなんだよー!!」
必死に説明するも鬼殺魂に火がついたのか煉獄くんは果敢に挑もうとする。
私が半泣きになって彼を止めていると、聞き覚えのある声が体育館に響き渡った。