第32章 悪霊退散
「まずどこに行くんだ?」
「わかんな〜い。」
二人の視線が私に向けられる。
優鈴は気配で察知するなんてことはできない。つまり、私しか“何か”の居場所はわからないのだ。
「…えー、気を取り直しまして、行こうか。一番近いのは理科室。職員室の前を通るので。静かに。絶対。静かに。静かにしてね。」
何度も年を押した甲斐があって、私達はまだ明るい職員室を切り抜けることができた。
「ふう、到着。」
「到着したけど、鍵がかかってるんじゃないか。」
「大丈夫。この学園、最後に見回りに来る用務員さんが全ての教室の鍵を閉めることになってるの。だから、まだ開いてる。」
私たちはそろそろと理科室に入った。
「いた。」
「いたのか。」
「をお願いね。」
優鈴は煉獄くんに私を託し、理科室の奥に向かった。
「煉獄くん、目を閉じて。」
「む、なぜだ?」
「見ちゃダメなの。お化けって隙を見せると怖いんだよ。」
私達は目を閉じ、寄り添いながら優鈴を待った。一分もしないうちに優鈴は帰ってきた。
「たっだいまぁ~。話し合えばわかりあえるね、あと何ヵ所あるの?」
「……多分、二ヶ所。ここと、プールと、体育館。」
「はぁ、遠いなぁ。それぞれが離れてるぅ。あんまし時間をおきたくないしぃ。」
優鈴が言う。私はじっと黙っていた。
「それじゃあ、分担すればよかろう!」
煉獄くんが控えめに大声を出した。…まぁ、許容範囲内かな。
「なら、をお願いねぇ。僕プール行くから。あ、見つけたらこれヨロシクう~。」
優鈴がポケットから何かを出した。それはお札だった。ホラー映画でしか見たいような、おどろおどろしい見た目のそれに煉獄くんがしばし固まる。
「終わったらそっち行くよぉ。」
優鈴がじゃあね~、とプールへ向かっていく。その足取りは軽く、迷いなんてないみたいで……。