第31章 怪奇現象
部活も終わり、皆がさっさと帰っていく中…私は、帰ろうという気にはならなかった。
そのことに実弥はめざとく気づいた。
「おい、帰らねえのか。さっさと帰らねえとお前のじいさんとばあさんが心配するだろうがァ。」
「…何でそんな保護者みたいなことを言うの?」
私達は皆にバレないようにこそこそと話し合った。
「じゃあ、実弥が伝えておいてよ。私はちょっと残るからさ。」
「はあ?いったい何をするんだよ…。」
「もう、本当に保護者みたいだね。……お節介な近所のおばちゃんみたい。」
「あ?」
実弥が青筋をたてる。
言っておいてあれなんだけど、そんな近所のおばちゃん会ったことありません。ごめん。
「まあ適当にごまかしておいてね。」
「あ、おい!」
実弥に何かを言われる前にさっさとその場を去った。
私はずっと感じていた気になる気配の方へ向かった。
それは私のクラスの教室からしていた。
この世のものではない何かの気配に混じって、優鈴の存在がひしひしとしていた。部活も終われば日が落ちてくる。窓から差し込む夕日色に廊下が染まっていた。
夜になる前に、優鈴を帰した方が良いだろう。何てったって、あの優鈴だ。
「霧雨さんッ!!」
「うぐッ!!」
廊下を走っていたら急に首根っこをつかまれた。突然のことに首が締まった。気配を感じ取っていたから走っていたスピードを落として対処できたけど、人間は急に止まれないし、首が締まっては冗談にならない。
「れ〜ん〜ご〜く〜く〜ん???」
「廊下は歩かなくては!!」
ぐうの音も出ない。止め方に難はあったが、彼が正しい。
「そんなに慌ててどこに行くんだ?」
「煉獄くんこそ、何でこんなところにいるの?ここから先は二年生の教室だよ?」
「うむ…いや、部活終わりに職員室に課題を提出しに行っていたら迷ってしまってな。下駄箱どこかわからなかった!」
煉獄くんは照れもせず大きな声で言った。…まあ一年生だし。さすが私立というか、この学園は広いからしょうがないね。