第31章 怪奇現象
木谷優鈴。
元風柱。
彼は元来、臆病だった。
実弥はそれが気に食わないのかもしれない。あのあと、彼は優鈴の手をとらず私を引っ張って教室から退出した。
「実弥」
「学校でそう呼ぶな」
…あんただってたまに下の名前で呼んでくるけどな!!と喉まででかかった言葉を止めた。
「優鈴があんなに臆病なのは理由があるの。」
「……。」
言葉が足らずに喧嘩するなんてのはこりごりだと、お互いに思っていたのかもしれない。
実弥はピタリと足を止めた。
「別にその事で怒ってるんじゃねえよ。」
「へ?」
「俺の先任がへなちょこだろうが気にしねえよ。」
「いや…優鈴はへなちょこじゃないけど。あ、信じられないかもしれないけど、夜になると人が変わったみたいにアグレッシブになって「早く行くぞ」」
実弥に話を遮られた。私は慌ててその背中を追った。
「じゃあ何に怒ってるのよ。」
「うるっせぇ。」
「い、いひゃい」
なぜかぐいっと頬をつままれた。
抵抗するさなか、実弥の耳がほんのり赤くなっていることに気づいた。
…?わけわかんない。本当に変なの。