第31章 怪奇現象
それでも教室の雰囲気は穏やかで、私達三人はのほほんと話していた…のだが。
「おい霧雨ッ!!!もう部活始まるぞ!!何をちんたらしてやがる!!!」
「ギャッ」
私の背中から醜い悲鳴が聞こえた。突然の来客に優鈴が驚いたらしかった。
その来客とは、何を隠そう実弥である。
「クラス近いから呼びに行けって言われちまったじゃねえか!!!ここから練習室遠いんだぞ、ボケッ!!」
「し、不死川くん…本当にごめんね……そ、その、これには事情が…!!」
そこまで叫び散らして、彼はようやく私の背中にチワワのわうにカタカタと震えながらしがみついている優鈴に気がついたらしかった。
「なんだァ、ソイツは。」
「彼は木谷優鈴。このクラスの転校生だよ。」
「あぁ、噂の。」
どうやらほんの少しの間だけやってくる転校生は学年で有名人になっているらしかった。
「……随分仲良さげだなァ」
実弥はじとっとした目で私達をにらんだ。
「こら、睨んじゃダメだよ。」
「あぁ?」
「この人は、元鬼殺隊なのよ。」
カナエがさらりと暴露する。優鈴は驚いたようで、また悲鳴をあげた。
「ちょっと、何でそうあっさり白状しちゃうの!?」
「しゃーないよキリキリちゃん。……不死川は変な誤解してるみたいやしぃー。」
クスクス、とアマモリくんが笑う。カナエも含みのある微笑みを浮かべていた。なぜか実弥は居心地が悪そうに首の後ろを手で撫でていた。
「…君も、鬼殺隊、です、か」
「あぁ、元な」
「……そう」
睨みをきかせる実弥に優鈴は怯えているようだった。
「優鈴、不死川くんは風柱だったんだよ。」
「え…そうなの?」
優鈴の瞳に輝きが灯る。
私の後ろから少し体をだし、実弥に握手を求めるように手を伸ばした。
「僕と一緒だね」
そう言う優鈴に実弥は驚き、言葉を失ったようだった。