第31章 怪奇現象
木谷優鈴。
彼は私の唯一の同期だった。
私と同時期に入隊した。数年後に柱となり、私たちは再会を果たした。
彼は小柄な男の子で、いつまでたっても背が伸びないとなげいていた。
少し人見知りで、照れ屋で、笑うとふにゃっとした顔になった、かわいい男の子。
死んだと聞いたときの悲しみはどれほどだったか。今となっては薄れた感情だけれど、当時はひどくショックで、私はしばらく柱合会議をサボったりしてお館様にも心配をかけてしまった。
彼が死んだのはカナエが柱になってすぐだった。カナエと話すのは緊張するようで、一言二言しか話していなかった気がする。人見知りだから新しい柱が増える度に彼はどぎまぎしていた。
「覚えてるんかなぁ。」
「覚えてるみたいよ。」
カナエは優鈴が転校の手続きに来たときに会ったというが、彼はカナエを見るや、あ!と声を出したらしい。そのあと逃げるように去ったというが。
「今生では会ってないもの。、話しかけてみたら?」
「えっ、私なの?」
「だって、木谷さんと仲が良かったのはあなたじゃない。」
いやいやいやいやいや。
「無理だよ、優鈴はあんなにたくさんの人にかこまれてるんだよ。」
「今じゃなくても、後の休み時間とか…。」
「頑張るんやで、キリキリちゃん。」
二人がやたらと背中を押してきた。とはいえ、周りの目もあるので全く話しかける隙がなかった。
そもそもカナエの顔を見て声をあげたというが、別の理由かもしれないじゃないか。カナエの後ろにとんでもなく面白い何かがあったのかもしれないじゃないか。
しかし、私は神様に愛されているかのようだった。
まるで奇跡のようにそのチャンスは訪れた。