第31章 怪奇現象
気になってしまえばもうそれが頭から離れなかった。あの教室のすみが私の心を奪ってしまったようで…。
「転校生が来るの、今日なのよ!」
私より先に登校していたカナエが私の心内を知らず、にっこり笑いながら教えてくれた。
「本当にビックリするわよ!私もたまたま会ったときにビックリしたもの!!」
「……カナエがそこまで言うなら…。」
私はビックリする心構えをしながらホームルームを迎えた。
カナエの言う通り、担任は転校生の存在を告げた。ざわつく教室に、担任が廊下で待機していた転校生を呼ぶ。
転校生はうつむきぎみに歩いてきた。
緊張しているのだろう。
私らその姿を見て、思わず叫びそうになった。
慌ててカナエを振り返る。カナエはニコニコ笑顔だった。
「しばらくの間、お世話になります…。キタニユウレイです。」
木谷優鈴、と担任が黒板に書き出す。
「ユウレイだって」
「変な名前」
こそこそと近い席の子達が言い合う。
声をひそめているつもりだろうが、静まり返った教室にはよく響いた。それが聞こえたのか、転校生は真っ赤になってうつむいた。
担任はそれを怒って注意した。その子達はしゅんとなってそのあとは何も話さなかった。
そして、担任は木谷優鈴が家庭の事情でほんの少しの間だけここにいることを伝えた。
「よろしくお願いします」
転校生は最後にそう言って、担任に言われた席についた。
一時間目が始まるまでの間、転校生は皆にかこまれていた。おどおどした様子で話していたが、やがて朗らかな笑みを見せるようになったのが確認できた。
「なあ、キリキリちゃん、胡蝶さん。」
その様子を見ていると、アマモリくんが話しかけてきた。…そういえば最近あまり話していなかった。久しぶりな気がする。
「アイツ、ひょっとしてやけどひょっとする?」
「ええ、ひょっとするわ。」
カナエがアマモリくんを警戒した様子で答えた。
この二人、何だか不穏で間に挟まれると胃が痛い…!!