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キメツ学園【鬼滅の刃】

第29章 前世の記憶ー壺に落ちた落雷ー


何発か攻撃を繰り出したけれど、出られなかった。
空気が足りない。毒を警戒して呼吸を控えていたから。


外の様子が見える。


安城殿が玉壺と戦っている。
私にかまう暇はないようだ。

やっぱり速い。目で追えないくらい。


何でこの人を差し置いて私が最強なんて言われてるのか不思議なくらい。


他人事のようにそう思っていた。けれど。


私は不穏な気配を察知した。


玉壺がくる。また何かやろうとしている。
安城殿は、気づかずまた斬りかかろうとしている。


「安城殿ッ!!!」


何をどう叫んだって、私の声はガボガボ、とかゴボッていう音にしかならなくて。


「安城殿!!安城殿ッ!!!」


彼は気づかない。何で。どうして気づかないの。わかるでしょう。何かしようとしてるんですよ。

でもわからない。気配を敏感に察知するだなんて、私にしかできない不気味な特技。

どうして。


どうして、私にだけなの。

今すぐ安城殿にあげたい。私はこんなものいらないから。


「陣殺魚鱗ッ!!!」


安城殿が吹き飛ばされる。血飛沫をあげて私の側に倒れこむ。

その直後に。


「霹靂一閃」


その言葉が聞こえて、水が弾けた。


「ッ……!!!」


私は水から解放された。
安城殿は血だまりの上に倒れていて。

ゲホゲホと咳き込む私の足元に広がる水が赤く染まっていく。

安城殿が血を吐く。最後の力で私を助けてくれた。


「ッくそ!!出やがった!!」

「……」


私の頭は冷静だった。

気付けば玉壺のすぐ側にいた。


「は?」

「八重霞」


頚に刃が刺さる。
玉壺が悲鳴をあげた。


「く…ッ!!!朝日が!!」


太陽が登り始めていた。

けれど。


一晩中戦い続けた私にも限界がきていて。微かに吸い込んだ毒がほんのすこし効いてきて。


力なく刀から手を離した。

本当に未熟だった。
でもその時の私は苦しくて。


玉壺が刀を抜き捨てる。


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