第29章 前世の記憶ー壺に落ちた落雷ー
「月の霞消!!!」
気配で感じ取った魚を切り刻む。
何匹か残ったけれど、問題ない。私はこれくらいでは何の被害もうけない。
「うっとうしいことばかりしないでもらえますか……ッ!!!」
「チッ、アホみたいに体が動くだけのクソガキがッ!!!」
私は再び刀を構えた。そのとき。
「霧雨ちゃん!!」
「安城殿ッ!!」
私は顔をあげた。上弦がいるということで援軍として駆けつけてくれたのだろう。彼の側で私の烏が飛んでいた。呼んできてくれたらしい。
けれど。
このとき、
ここに呼ばなければよかったと。
私は何度も思うことになるのだが。
「柱が二人…!ほう、これは楽しいことになりそうだ。二人とも上手そうだ。」
「ったく、バカねえ。そんな気持ち悪い姿して。」
安城殿がベーッと舌を出す。
「気持ち悪い…!?」
玉壺が怒る。
安城殿がにやりと笑う。
「雷の呼吸」
フワッ、と風が吹く。安城殿の気配が一気に動いた。当時、彼より速い人は鬼殺隊にいなかった。ゆえに、私も追い付けなくて。
「陸ノ型…電轟雷轟ッ!!!」
体の大きな安城殿はたやすく玉壺に届いた。
腕を斬り落とす。
「一万滑空粘魚ッ!!!」
「安城殿ッ!!!呼吸を止めてください!!!!!」
私はそこでやっと追い付いた。
「月の霞消ッ!!!」
再び斬る。やはり全ては斬れない。
「またお前かあッ!!!」
「霞雲の海!!!」
私はそのまま斬りかかる。
玉壺が手に一つの壺を持っていた。
「ッ、霧雨ちゃん!!」
安城殿が叫ぶ。私はハッとした。
「捕まえたぞ」
玉壺がにやりと笑う。
壺から水が出てくる。
私は慌てて身を引いた。
「水獄鉢ッ!!!」
ゴポ、と水の中でしか聞こえない音がした。
最初は何が起こったかわからなかった。せれど、すぐに動いた。