第29章 前世の記憶ー壺に落ちた落雷ー
柱になって二年目だった。
私は強敵と対峙していた。もうかれこれ数時間。
上弦の伍の玉壺という鬼でした。
「ひょっひょっ、なかなかに強いですねえ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
私が斬りかかる。頚までたどり着かない。この繰り返しだった。
それに。
「千本針魚殺ッ!!!」
「参ノ型、霞散の飛沫!」
「ひょっひょっ!!あなたの攻撃なんぞ届きやしませんよ!!」
この針が厄介です。恐らく、あのムカつくほどの自信満々な顔を見る限り毒でしょうし。
(いちいちうっとうしい…)
私は踏み込み、針を弾きながら奴の近くまで進んだ。
……奴は近づけば壺に引っ込んでしまう。だから。その前に。
壺を叩ききる。
「移流斬り」
その直後に頚を狙う。けれど、胴体を分裂させただけだった。それでも玉壺は苦痛に顔を歪めた。
「あははッ!ほうら、届きましたよ!!」
私はやっと一太刀浴びせられた。
しかし、玉壺は動じなかった。斬り落とされた下半身を捨てて玉壺は地を這う。
そのまま近くの木に蛇のように登っていった。
「…いやはや、こんな小娘にこの姿を見せることになるとは。」
「……ッ」
私はその気持ち悪い姿に嫌悪感を抱いた。
「この真の姿を見るのは貴様で二人目だ。」
「………そうですか。」
珍妙な姿。姿とともに雰囲気が変わった。本腰をいれないとまずい。
「死ねッ!!!一万滑空粘魚ッ!!!」
空に数多の魚が飛び散る。
(うっわ……)
その魚達は毒の類いだと察知。
呼吸を止めた。けれど、肌がチクリと痛んで。
皮膚からもすいとってしまう毒だとわかった。触れたら一溜りもないだろう。
よく見て。感じて。判断しなきゃ。