第28章 絆
結局自分のものは特に買わず、二人の買い物に付き合っただけになってしまった。
そのあとは目的もなくモールの外にある通りに出てブラブラと歩いていた。
「義勇くんがお姉ちゃん想いで感動したわ。」
「…あんたも五人いるんだろう?」
「五人もいると弟の私はいじめられちゃうの。」
二人がペラペラとしゃべる横で、私はボーッとショーウィンドウを眺めていた。
いかにも女の子といった風な洋服がマネキンに着せてあった。
「霧雨ちゃん、この服気になるの?」
「えっ」
私は声をかけられて思わず立ち止まってしまった。
「い、いえ、全然…!」
「本当に?遠慮しなくて良いのよ~?」
「あ、その、えっと」
冷静に対処できなかった私は咄嗟に答えてしまった。
「天晴先輩に似合いそうだな~って!」
「さすがにサイズがなかったわねぇ。」
天晴先輩が困ったように笑う。まさか店に乗り込んでしまうとは。危なかった。かるはずみな嘘はやめた方がいいんだなあとわかりました。うん。
「しかし、霧雨の言う通り確かに着ることが出きれば似合っていただろうな。」
「あらやだ、二人してそんなに持ち上げないでちょうだいよ~。あ、そうだ。お茶しない?そろそろ歩き疲れたでしょう。」
天晴先輩の提案でカフェに行くことになった。どこか良い場所はないかと探していると、天晴先輩があ!と声をあげた。
何だろう、とその先を追うと…。
「不死川?」
冨岡くんが言う。そう、実弥がいた。車道を挟んだ向かいの道にいた。
家族できているようだった。でも父親の姿はない。休日出勤が多い人だから今日も仕事なのかもしれない。
実弥が玄弥くんの手を引いて歩いていた。
「偶然ねぇ…。私と一緒にいるの見られたらまずい…わよね。」
「い、いえ!そんなことありませんよ!」
天晴先輩のしょんぼりした顔が儚げでそう言わずにはいられなかった。
「あいつ、弟がいたのか。……ん?」
何やら呟いていた冨岡くんが突如走り出した。
私達は驚いて一瞬だけ固まっていたが、すぐにその背中を追った。