第28章 絆
「霧雨は一人っ子か?」
そう聞かれて戸惑った。
「……どうだろうね。」
「は?」
「…いるっていうか……いた…って感じかな。」
そう言うと冨岡くんは黙ってしまった。
私は慌てて説明した。
「えっと、前世では私、お家の三番目の子供だったの。けれど、今生では上の人達を見てないんだ。だから、多分今はいないんだと思う。」
「…そうなのか。」
どこかホッとしたように彼は言う。
そこでこの話しは終わり、じっと髪飾りに見入る。
「お姉さんにどんなのあげるの?」
「……あまりこういったものは詳しくない。これはどう使うんだ。」
冨岡くんが目についたバレッタを手に取った。
「この金具をパチンッてやって髪に止めるの。あ、それとかかわいくていいんじゃない?」
説明しながらそれに手を伸ばす。青色の石がついた綺麗なデザインだった。
「いや……これは姉さんらしくない色だ…」
冨岡くんが私からバレッタを取る。戻してくれるのかと思えばすっと私に手を伸ばした。
男子に近づかれるのが苦手な私は思わず目をつぶった。けれど、もちろん彼は殴ったりなどするはずもなくすぐに開けた。
髪に彼の指が触れる。パチン、と音がした。
冨岡くんがくすりと笑う。
「お前に似合う」
「……へッ!?」
顔が赤くなるのがわかる。冨岡くんはむふふ、と笑っている。
「姉さんは赤色が好きなんだ。」
「っ、あ、そ、そう、なんだー。あは、あは、は…。」
私はドキドキしながらバレッタを外した。
な、何なんだ。時々かいま見えるイケメン感は。
「霧雨、もっと選んでくれ。さっぱりわからん。」
「あ、そ、そうだねー…。えぇっと…何が良いかな~!」
私達がそうこうしているうちに天晴先輩が戻ってきた。良いものが買えたと嬉しそうに笑いながら。