第28章 絆
天晴先輩の噂は瞬く間に広がっていった。
…自分を女として見せるために様々な努力をしていたんだろうなと思う。誰も知らなかったようで、学園でビッグニュースになっていた。
一番ショックを受けたのは伊黒くんだった。部活中に宇随先輩に笑われた彼の肩を黙って叩いた。大丈夫。あれは仕方ないよ、わかんないもん。
学園内がざわつくなかで、私と冨岡くんと先輩の三人で話すあの習慣はまだ続いていた。
「かわいい雑貨屋さんあるんだけど今度一緒に行かない?」
天晴先輩はそんなざわめきを気にしてはいないようだった。
「雑貨屋ですか…あまりそういったものは…」
「今度の日曜日、何もないって言ってただろう。行ってきたらどうだ。」
「冨岡くん、首削ぎ落とすよ?」
なぜ私の事情を考えないんだくそ野郎。
「冨岡くんも来るかい?」
「雑貨屋には行ったことがない。行ってみたい。」
冨岡くん“も”ってことは私が行くこと確定かい。
ていうか話し聞いてた?“かわいい”雑貨屋だぞ。行ってみたいじゃねえよ。
「それじゃあ日曜日!決まりだ!」
「あぁ、楽しみだ。」
冨岡くんがむふふ、と笑った。
………マジか。
行くとか言ってないのに行くこと決まってしまったぞ…!?