第28章 絆
「ッ!!!さっきイケメンの先輩と歩いてたよね!?」
教室に入るなり先に来ていたカナエにそう言われた。どうやら、教室の窓から見えていたようだ。カナエはよく外を見て、あの人が格好いいだの、歩いているカップルの馴れ初めだの、聞いていないのに語りだしたりするのだ。
「誰なの!?あの人誰~!?」
「あ、いやあ……。」
何て説明すればいいんだ。
私は対応に困ってしまった。というか、朝の教室でこんなに騒がないでほしい。
「……お友達だよ」
「本当~?顔赤かったわよ?」
「……あの、また話すよ。長くなるから。」
「…ッうん!」
何だか顔が明るくなる。…この顔は嫌な予感しかしない。彼女の期待を裏切ってしまうことになるだろう。
昼休みに教室から移動し、私がいつもトランペットを吹く階段の踊り場で今朝の話をした。
「ええッ!!!」
予想通りにカナエはショックを受けていた。
「……に彼氏ができたと思ったのに…」
カナエは心底残念そうに言いながらパンをかじる。
「いや、そんなの私にはできないって。」
「そんなことないわ、こ~んなにかわいいのに!私はもっとに人生を楽しんでもらいたいわ!」
「…十分楽しんでるけど。」
私はお弁当をたいらげ、包みに戻した。
「う~ん、やっぱり不死川くんが好きなの?」
「………この前、喧嘩した」
「えっ!?」
私はそのことについても全て話した。
カナエは真剣に聞いてくれた。
「まさか、あの先輩が安城さんだったなんて…。元鳴柱だったのね…。確かに、良い噂はない人だし不死川くんの言っていたことは正しいわ。けれど、が慕っている人をそんな風に言うのは良くないわね。」
「………そうだね…」
カナエの言うことは正論だ。冨岡くんの言った通り、私は悪くて悪くない。実弥もそうなのだ。