第27章 水飛沫
本を読んでいても、授業中でも、吹奏楽部でも、美術部でも、将棋部でも、いつ、どこで、何をしていても。
実弥のことが頭に浮かぶ。
今まで恥ずかしくて、ろくに自分と見つめ合ってこなかったけれど。
あぁ、好きだったんだなぁ。
つくづくそう思う。
前世の私が想いを持っていってしまったから、あまりはっきりと覚えていないけれど…前世では悲鳴嶼先輩と恋仲だったんだよね。そのときもこんなキモチだったのかな。
好きだ。実弥が好き。
でもダメなんだろうな。きっと。
あんなに怒鳴っちゃってさ…もう戻れないんだろうな。謝ったら許してくれるのかな。
ちゃんと話せば良かった。実弥は私のこと心配してた…?…って、ことだよね。うん。今思えばそうだ。ちゃんと安城殿のこと話せば良かった。わかってもらえるまで、じっくりと。
………いつもそうだ。
私はいつも秘密ばかり。それが一人では抱えられない秘密だとわかっていながら隠し続ける。
その秘密に私は殺されたのに。
馬鹿だなぁ、阿保だなぁ。
何でこうなるんだろう。隠しておいた方が得策だと思ってもさ。結局はこうなるんじゃんか。秘密なんてろくなことない。
隠してどうする。隠した果てに私はどうするつもりだったんだろう。
今となっては何もわからない。