第26章 一枚絵
真っ赤になって縮こまる私に安城殿は呆れていたようだった。
「……大正時代じゃないんだからさぁ、五人ぐらいオトコ侍らせたら?」
「へ…?」
「私、彼氏と彼女どっちもいるわよ。」
私はまたコーヒーを吹き出しそうになった。いや、吹き出しそうになったのはきっと私の魂だ。魂が口から抜けていきそう。うん。
「帰っていらっしゃい」
「はっ」
安城殿が魂を戻してくれた。
「…恋愛に関しては初心者なのね……」
「すみません、オトコは五人もいりません…」
「で?誰が好きなの。どんなオトコ?」
私はもうコーヒーを飲むのをやめた。テーブルの上に固定しておくことにする。
何と答えたらいいのか、と思えば背後から気配がして、まさかと振り返った。
「おい、アマモリ見てねえか?見失ったんだよ。」
実弥だった。肩で息をしていた。
私をたまたま見かけて外から入ってきたんだろう。
まさかのご本人様登場に、私はまた魂が抜けた。
「あらぁ、霧雨ちゃんのお友達?」
「……ッ、ス」
安城殿が男だとは気づかないだろう。パッと見は超ウルトラスーパーモデル体型の美女にしか見えないし、声もちょっとびみょうだから。
「へぇ。」
目が嫌に光り、不気味に口角をあげた。
あっ。これ、バレた。
私は本能で察した。
「まあ座って。お友達が消えて暇なんでしょう?」
「……」
私と安城殿を見比べてくる。私は目を合わせられなかった。が、実弥は私の隣の席に座った。
……座るんかい。アマモリくんはどうした。探しにいけ。
「あなた、元鬼殺隊ね?」
「ッ!?」
「わかるのよ。鬼殺隊は目が違うわ。霧雨ちゃん、彼のこと私に紹介してくれる?大丈夫。あなたのお友達に手は出さないわよ。」
ほらやっぱりバレてる!!
何でこのタイミングで現れるんだ。バカ。バカ実弥。