第26章 一枚絵
その後、私たちは宇随先輩のクラスに行ったり、お化け屋敷をやってるクラスに行ったりして楽しんだ。
お化け屋敷とやらには初めて入ったけれど、申し訳ないほどに怖くなかった。夜のお化けより夜の鬼が怖いっていうことを知っているからだろうけど。
外でお昼ごはんにたこ焼きをつまみながらぶらぶら歩いていると、カナエが知らない人に声をかけられるようになった。
「ねぇ、胡蝶さんだよね?一緒に文化祭回らない?」
何度目かわからないお声かけをカナエは丁寧に断る。
「ごめんね~、。スムーズに行けないね~。」
「いやぁ、ははは。」
カナエはすごいなぁ。モテモテだ。まだ色んな人から告白されてるって聞くし。私はもうカナエがふった人からも相手にされなくなったので、多分そろそろ三美女とやらから除外されるだろうと思っている。
「あッ、いけない。」
「どうしたの?」
「そろそろクラスに戻らないといけないのよ~。」
「あぁ、当番か。」
私達のクラスは映画を視聴覚室で上映している。クラスみんなでの創作映画だ。カナエはヒロイン役で参加している。アマモリくんも目立つ役で出ていた。私は黙々と裏方に徹していたので出番はない。
受付や機材のチェックなどは映画の演者がやることになっていて、見えないところで死ぬように頑張った裏方はお仕事免除である。
監督がやたらと無理難題を裏方に押し付けるので、ひいひい言いながら小道具や衣装を仕上げた。映画の内容はまぁ言ってしまえば灰かぶり姫のパクりみたいなものだ。
「お仕事頑張ってねー。」
「は~い!」
カナエが元気に去っていく。
私はまだ行ってない出店を見に行こうと歩きだした。
そこでスマホが鳴った。
『やっほ~。お友達にふられたみたいねぇ~?』
「安城殿!」
あまりにもタイミングが良すぎるし、言ってる内容もまるでストーカーしているみたいだった。
『上よ。う、え。この天晴はいつも人の上にいるの。』
「はい?」
私は首をかしげ見上げた。すると、開けられた校舎の窓から安城殿が顔を見せていた。
『目が合ったわね。可愛いお嬢さん。私とお茶しない?』
「します」
この距離でもわかるその美しい顔。
眼福である。もう一生ついていく。一生推していく。