第25章 苦手人
「霧雨ちゃ~ん!!」
「ぐへっ」
180センチは優に越えるその体躯で私に飛び付いてきた、思わず悲鳴が出た。
「いや~ん!もう会いたかったんだからぁ!!まさかこんな運命の再会ができちゃうだなんて!」
「離れてくださいアンジョウ殿ッ!!!」
私は有無を言わさず押し退けた。あぁん、とか悲鳴をあげているがおかまいなし。
くそっ、この人何にも変わっちゃいねえ。
「うふん。まさか鬼殺隊最強の霞柱、霧雨ちゃんがあんなところにいたとは…。あぁ~ん、神様…!サ、イ、コ、ウ。」
「……。」
この人、前世では何かと私にちょっかいをかけては楽しむ人だったのだ。今も変わらないようだが…。
「私も、鳴柱殿と再会する日がくるとは思いませんでしたよ…。」
「ふふ、まぁ普通はそうよね。」
この人は私が柱となったその二年後に死した、雷の呼吸の使い手である鳴柱であった。
その名をアンジョウアッパレ。漢字では安城天晴。
正真正銘、生粋の男である。
伊黒くんがあんなになってしまったのに。
安城殿は男なのである。
「……最初は女と生まれ変わったのかと目を疑いましたよ…」
「愚かな勘違いだわ…。この私……天晴はね、生まれ変わろうとも……
“男”なのよッ!!!!!」
「あぁくそっ!こーゆーところは格好いいっ!!」
前世から顔も良いしスタイルも良かった。外見も中身も女の人だったけれど、自分を男とは認めている。恋愛対象は女。
男に生まれた安城天晴殿は、生まれながらにその恵まれた容姿を所有していた。
そして、ある時気づいたらしい。
『どの男よりも自分はハンサムで、どの女より自分は美しい』
そう思いこんだ彼(彼女)は男でも女でもある今のポジションに行き着いた。
私はそれを聞いて感心したのだ。何て心の綺麗な人だろうと。………まあ、それを素直に伝えたら、ちょっかいかけられるようになっちゃったんだけど。