第25章 苦手人
「「女性アレルギー!?!?」」
二人で叫んでしまった。
伊黒くんがマスクを直しながら頷く。
「……すみません、ずっと黙ってて」
「いやぁ…それはいいけどよ……」
宇随先輩と私は何も言っていないのに目が合った。
「あのー…私は……」
「……霧雨は、…その、何だか、……昔に会ったことがある気がしたんだ。慣れていたら大丈夫だから…例えば、母親相手にアレルギーは出ない。」
「はぁ…まあ、私もどっかで会ったことある気は…?しなくはない??」
「そんなこと言い出したらきりねえだろ。」
宇随先輩に突っ込まれた。確かに。
「まぁ三美女なんて急に来たらなぁ…ブフッ」
お前も三美女なのにな、とその笑い声が語っていた。
黙ってろ。どうせ私は女と認識されないくらいに顔と性格がブスだ。
ていうかあの人のこと
…あぁ、そうか宇随先輩は知らないのか。まあそうだろうな。
………これ知ったら伊黒くんは何て思うのかな。
新たな発見があった今日の部活も終わり、皆で美術室を出る。
「ん?霧雨帰らねえのか?」
「はい。将棋部に行ってきます。」
そう嘘をついて二人と別れた。
気配でわかる。あの人も、私が気配でわかることを知っているからかある場所にいて動かない。
そこは生徒会室。一般生徒はまず入ることがないであろう場所。
私は戸惑いもなく開けた。
その人はそこにいた。
高等部の制服を身にまとい、部屋の中で立っていた。動けばさらさら、とロングヘアーが揺れる。これでもかというくらい短いスカートからのぞく足は美しく、そして長い。モデルかと言わんばかりの高身長。大きなめ。小さな鼻。はりのよい唇。ばっちりメイクに…ピアスがつきまくったじゃらじゃらの耳。その容姿は百点満点の女の子。
……女の子。
「いらっしゃい…」
少しハスキーな声でそう呟くその人は、不気味に笑った。