第24章 前世の記憶ー霞がかる煉獄ー
「……!!」
ふらり、と彼の体が倒れこもうとするときに私はやっと動いた。
「!!霧雨殿!?」
「…もう少し。」
私は彼の体を支え、彼が刀を握り手の上に自分の手を重ねて私も刀を握りました。
「頑張ってください。踏ん張ってください。鬼の頚を斬るまでは、刀をはなしてはいけません。」
「…ッ、はい!!」
「もう少しですから。」
私は大した力はいれませんでした。彼を支えているだけです。
そうか。彼は呼吸の常中ができていないんだ。それでこれだけ手こずるのか。
「何がもう少しだ!!まだ半分も斬れてねえぞっ!!そ、そうだ!小さくなってやる!また小さくなってお前の体内に入ってやるうう!!!」
「小さくなれないと思いますが。」
「…何を!?」
鬼はそこまで言って口から血を出した。目から涙のように血が流れている。
「あ、あるぇ…な、なんじぇ、ら…」
呂律も回っていないようです。
「…!霧雨殿!!頚が腐ったように柔らかくなっています!!」
「言ったでしょう、もう少しだと。」
私は彼に微笑んだ。
そして鬼にも笑いかけた。
「あなたの敗因は、血鬼術を過信しすぎたこと。そして、人間の体内に侵入するのはどういうわけか安心だと思い込んだこと。」
「な、に…」
「私の血液の味はどうでした?」
隊士が力をこめる。鬼は断末魔をあげながらその頚を落とした。
「…やった…やりました、霧雨ど…の……」
「おっと」
私はふらつく彼に肩を貸しました。彼は青白い顔をしながらもまだ意識はあるようでした。
「……村人は無傷なようですね。」
鬼の頚が斬れたのを見届けた村人たちは換気の声をあげ喜んでいた。
「よくやったと思います」
「……霧雨、殿…あなたは…体内に何を…?」
「あぁ…。」
私は少し気まずかったが素直に言った。
「ここ数年、藤の花の酒を飲んでいるのですよ。」
「……酒…?」
「酒の成分は時がたてば体から抜けていきます。しかし藤の花の成分は体に蓄積されていくんですよ。まぁ、大人には秘密ですが。」
私はまだ酒を飲める年齢ではありません。ですが、鬼を根絶やしにできるのなら。
美味しくないお酒だって平気で飲めるんです。