第24章 前世の記憶ー霞がかる煉獄ー
気配がなかったのは小さかったから。私の体内にいたから。
「炎の呼吸、弐ノ型、登り炎天ッ!!!」
鬼が真っ二つに割れる。
「ぎゃああぁぁ!!なぜだああぁぁぁぁぁ!!!なぜわかったあぁぁぁぁぁ!!!俺の血鬼術は最強のはずだ!!うぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
鬼の大きさが元に戻る。
どくどくと頬から血が流れる。
…まずかったですね。あと少し遅ければ、骨までえぐり出さないといけなかった。
「あなたより手強い鬼は数多く存在しますよ。」
私は刀をおさめた。血鬼術が厄介な鬼でしたね。
「そして、あなたより強い鬼殺隊士も。」
鬼の背後から隊士が刀を振り下ろす。
鬼がそのことに気づくも、間に合わない。
頚に刃が入った。
「くそがあああ!!お前なんかに斬れるかあ!!!!!」
「ぐっ…!!」
手負いの剣士には十二鬼月の頚は硬いでしょう。
「………」
「…っ!!」
私は手を出さなかった。
出す必要はないと思っていた。
「………鬼狩り様っ!このままでは!」
「あのお方は我々を守ってくださった!」
「どうか助けてあげて!!」
村人が私に叫ぶ。
でも。
「いいえ、あの鬼は…彼が斬るのです。彼が斬らなければならないのです。私はここてあなた達を守るだけです。」
「そんなッ!!!」
「……。」
よく次世代の育成をしろと他の柱から口酸っぱく言われます。私はよくわかりませんが。
次世代を育成したところで死んでしまっては意味がないでしょう。今の柱はみなそうして継子を失ってしまった。
死なせてしまう継子なんていらない。私は私の任務しか遂行できない。次世代は守れない。
けれど、彼は。
彼は全てを守ろうとした。恐らくあの死んだ隊士達のことも。死体のどの傷より彼の傷が深い。それなのに彼は生きている。鬼の頚を斬ろうと、今闘志をその炎で燃やしている。