第24章 前世の記憶ー霞がかる煉獄ー
「あなた、名前は?」
私が聞くと、彼は言いました。
____煉獄杏寿郎と。
「…煉獄……」
「あ…父をご存じですか」
「はい」
……柱を引退してしまった彼の顔が頭に浮かぶ。
確かに言われれば顔が似ています。
「…煉獄くん、槇寿郎殿に…お酒はほどほどにと…。いえ、私が言えたことではありませんね。」
何か伝言をと思ったが気のきく言葉がでなかった。
「いえ!伝えておきます!」
「…そうですか」
彼は満面の笑顔を浮かべていた。私のことを知らないのでしょうか?随分素直な子ですね。
「……では、私は行きますので」
「!?もう行くのですか!?」
「…まだ夜は続きますから」
私は刀をおさめた。頬の血はやっと止まりだしたが、多分傷は残るだろうなと思う。
さっさと去ろうとするも、煉獄くんの言葉により止められた。
「あの!もしよろしければ、俺に指南していただけませんか!?」
その言葉を無視できず、私は驚いて振り返った。
「何を言うのです、呼吸も違いますのに」
「剣術だけでよいのです!どうかお願いいたします!!」
煉獄くんが頭を下げる。私は首を横に振りました。
「……今のところ、私は次世代にどうこう関与するつもりはありません。呼吸が違うのならばなおさらです。」
「……そう、ですか…。」
少ししゅん、とされたので何だか心が痛んだ。…こういうときどうしたらいいんですか…。
「…全集中の呼吸を休まず持続させること」
「……」
「まずはそこからです。それさえできれば、あの鬼の頚も楽に斬れるでしょう。技をみる限りよく鍛練しているようですから。」
私はそう言って、背を向けた。
「……今のまま励むように。」
「っはい!ありがとうございます!!」
その返事を聞き届けて私はその場を去った。
何人かの隠をその際目にした。
あとは彼らが何とかするでしょう。
(……お館様になんと報告しようか)
下弦の参を柱の私が斬らず下の隊士に任せたのは…言えば職務放棄。なかなかの問題なのです。
(次世代育成、でいいですかね)
そんなことを考えながら、まだまだ続く夜を私は駆けていきました。