第23章 面影
言葉の意味がわからないほどばかじゃない。
だからこそ、卒倒しそうになった。
「れ、煉獄くん…突然で何が何だか」
「うむ、確かに!ならば言おう、前世から好きだった!」
「お、おぉ…?」
変な汗が背中を伝った。暑い。真夏のクーラーもついていない教室ばか暑い。
「一度任務で一緒になったことがある。その時だ。」
「…覚えてない訳じゃないけど……?」
「あなたの剣技は美しかった。もちろんあなたも。」
………。
ええっと。
「あなたの罪の真実は知っていた。」
「………槇寿郎殿から聞いた…ってこと?」
「あぁ。」
槇寿郎殿は彼の父親。そして。
私が罪を犯した日。
下弦の鬼を追った隊士との連絡が途絶えたことから、その隊士を助けに霧雨家の屋敷に駆け込んだ人物だ。
彼は私が隊士を殺したのは仕方のないことだったと、お館様に訴えてくれた。感謝してもしきれない。
けれど、突然柱をやめてしまった。私は何度か訪ねたが……燦々たる出迎えを受けたので途中から手紙だけ送るようにした。返事はなかった。
「……ただ、父親のことはあなたが死んでから知った。」
「そう…。」
私は頭を抱えた。
そんなことを聞かされたからといえ、問題は解決しない。
「と、いうわけだ!用は終わった、すまなかった!」
「………返事はいらない?」
「その顔を見ればわかる!」
煉獄くんがにっこり笑った。私はホッとした。
「すまん、あんたが死んでから伝えなかったことを悔やんでな。この学園にいることは知っていたんだがなかなか会えず…さっき見かけて、今しかないと思ったんだ。」
「ほんと…君はまっすぐだね…」
「はは、それは嬉しい。そうだ、また家にも来ると言い!父上も喜ぶだろう。家族全員記憶があるんだ。」
「……へぇ。」
なんっちゅう家族だ。
……まぁ槇寿郎殿には会いたいし、今度お邪魔しようかな…?