第23章 面影
その後、剣道部の活動は終わった。ギャラリーも去っていくし、見るものも見たし帰ろうかと言っていたときに。
汗をふいている煉獄くんとバチッと目があった。…何だ?気のせい?
しかし。
彼はずんずんとこちらに向かってきている。
ギャラリーがきゃあと喜びの声をあげた。
そして、ピタリと私の目の前に止まった。
おぉ、と周りがざわつく。アマモリくんが目をパチクリとさせている。
へ?何?何なの?
「霧雨さん!久しいな!!」
…え?
「突然すまない!少し待っていて欲しい!!」
えええええええええええええ!?!?!?!?!?!?!?
そして、くるっと振り返って去っていく。ちょ、待て、待ってくれ!!私の返事を…!!
「…え、何?」
「あれ三美女の…」
「えー!?知り合いなの!?」
「ビックニュースだよ!!」
「これはやばいねー!」
ギャラリーがはしゃぎながら去っていく。
やばいと本能が言っている。
「……キリキリちゃん、仲良かったん?」
「え、あの、…えぇ…?」
私は嫌われ者だった。
仲のいい人なんてほんのちょっとしかいないし、そのほんのちょっとにアイツは入ってないぞ。
「待っていて欲しいって…。やべぇめっちゃおもろいやんか…。」
「本音聞こえてるよ」
アマモリくんは親指をたてて去ろうとするので慌てて腕をつかんだ。
「連れてきたのは君なんだから責任とってよ…!?」
「いや、そんな野暮なことせえへんよ。わかってるって…三美女と剣道部のイケメンルーキーがこれっちゅう話しやろ?」
これ、のところでハートマークを作ったアマモリくん。
「ち、が、い、ま、す」
「待たせてすまないッ!!!」
「うおっ」
突然真後ろで叫ばれた。変な悲鳴が出たし、ハッとしてアマモリくんの腕を離してしまった。いつの間にか着替えた煉獄くんがいた。……はやくないか?シャツしわしわだし。…何をそんなに焦ってるんだ?
助けを求めようとアマモリくんの方を見ると、そこには誰もいなかった。
……………は?逃げたってこと…?
はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?