第23章 面影
連れていかれたのは室内運動場だった。そこにいるのは剣道部…なのだが。
「な、何でこんなに女子がいるの?」
中等部・高等部関係なく風通しのために開け放たれた大きな扉にわらわらと女子が群がっていた。
「見たらわかるで!」
アマモリくんは女子の群れに突進していく。…よく行けるな……。
私もついていった。
アマモリくんのように中を覗き込むと、剣道部の部員達が試合をしていた。
「あれが皆のお目当て」
と、指をさされたが。
全身に防具をしているのにわかるわけないだろう。体つきからして男子だということはわかる。
「今年入学したばかりの期待のルーキーやで。家が道場なんやって。」
「へぇ…。」
一年生なんだ。吹奏楽部も一年生が入学してきて、私も後輩ができた。まだ部活になれていなくて、わたわたとしている。
けれど、その子は。一年生なのにしっかり動けていて。かなりの熟練者だと言うのは素人目にも明らかだろう。相手は先輩らしいのだが、完全に押している。
「すごいね、一年生なのに。でも何が面白いの?」
「まー、見ときって。」
私は言うことを聞いてじっとしていた。
そうしているうちに試合が終わる。一本決まった。期待のルーキーとやらの勝利だ。
キャーッ!とギャラリーがわく。
礼をし終え、面を外した。頭の手拭いを外す。そうすると、長い髪があらわになった。
しかしこちらに背を向けているので顔は見えない。
何が面白いのかさっぱりわからずにいると、彼はその髪をハーフアップに結び、くるりと振り向いた。
私は叫びそうになった。何で止められたかというと、周りのギャラリほ叫び声で我に返ったからだ。
「あ、アマモリくん…!!」
「めっちゃおもろいやろ!?」
「お、おお、面白いって…!?」
何か思ってた面白いじゃないんだけど!?そういえば関西の人の“おもろい”は“面白い”と意味が違うとか聞いたことがあるような…?
「あれ、煉獄くんじゃん…!!」
「たまたま廊下で見つけてもうたんよなー!」
アマモリくんはにしし、と笑った。
周りのギャラリーがきゃあきゃあ言いながら彼に手を振る。にこり、と笑えばそれはもうとんでもない黄色い声援で。
まぁ確かに顔綺麗だもんな。性格もよかったし、そりゃもてるよな。