第23章 面影
春も過ぎ去ると夏が来る。
夏は吹奏楽部のコンクールが忙しい。
夏休みはほとんど潰れていく。去年一年生だった私は部活の決まりにより参加できなかったので、今年が初舞台になる。
今から緊張するけど気合いも十分!!
今日もバッチリ練習を終えてこれから帰るところだ。
「なぁ、キリキリちゃん。これから暇?」
ときうときにアマモリくんに話しかけられた。
「暇だよ。何かあるの?」
「それがとびっきりの面白いもん見つけたんよ。ちょっと来てくれへんか。」
「え、行く行く!」
前世では私の刀鍛冶だったアマモリくん。彼と私は、正式な関係ではなかった。
刀鍛冶が撃った刀で隊士を殺してしまった私は、刀鍛治から非常に嫌われていた。そのせいで刀を撃ってもらえず、一時期は入隊を猛反対された。
私はそれでいいと思ったけれど、お館様が譲らなかった。刀はお館様が持っていたのをいただいた。けれど私に合わないから刃こぼればかりしてついには折れた。
刀鍛冶の里に行こうとしたが、誰もつれていってくれなかった。
仕方ないことだけれど、刀がなければ戦えない。しばらく折れた刀でたたかった。
でも限界がきて、私は自ら里を探した。気配を探って、何日もかけて。
それで見つけた。これほどまでに気配を異常に感じてしまう自分の特技に感謝したことはない。
けれど、勝手がわからない。どうしたら刀を打ってもらえるのか。何で皆ひょっとこのお面してるんだろう。
適当にブラブラしていたら、アマモリくんに会った。迷子なのか、どうしたのかと聞かれた。
刀鍛冶の里に住んでいたけれど、アマモリくんは刀鍛冶ではなかった。事情があって刀鍛冶として認められていなかった。
けれど、腕は確かで非公認の刀鍛冶でありながら私の刀を打ってくれた。
そこから私達は仲良くなった。現代でもそれが変わらないのが嬉しくてたまらない。
私があの卒業式の一悶着のあとに記憶があると伝えたら、彼は嬉しそうに喜んでくれた。
「キリキリちゃんきっとびっくりすんで!」
「わ、廊下走っちゃ…置いてかないでよ!!」
あと、足が異様に速い。
これも前世から変わらない。
でも体育祭で代表になったりするのは嫌だから、クラスの皆の前では俊足を披露していないんだって。
私もそうしたらよかった…。