第4章 煌めき
「完成だあぁ~!!!」
先輩はパレットを持ったまま美術室の床に寝転んだ。私と伊黒くんも筆を持ったままぐったりとへたりこんだ。
やっと完成した。
太陽の光が差し込む森の中のギャップが描かれた大きな紙が美術室いっぱいに広がっていた。
絵を描くために着ていた体操服は絵の具で汚れていた。指には消えにくい絵の具が染み込んでいた。
伊黒くんはいつもしているマスクをずらして息を吐いた。
疲れているようだ。
「ほらね、伊黒くんだけじゃ描けなかったでしょ?」
「そうだな。霧雨、ありがとう。」
私たちは疲れきった体を動かして絵を体育館のステージまで運び飾り付けた。
背の高い宇随先輩がてきぱき動いてくれた。あまり背の高くない私達は、ほんの少し手伝っただけで終わってしまった。
飾り終わった絵を三人で見ていると、
「今年も良い出来だね。」
私達に声をかける者がいた。
「学園長!」
宇随先輩が嬉しそうに振り向く。私と伊黒くんもそうした。
私は目を見開いた。
(お館様……?)
学園長。入学式の時はいなかった。参加するはずなのに急遽重要会議が入ったので代理の先生が話していた。
なので知らなかった。
知らなかった知らなかった。
私は唖然とした。
あのあと将棋部に顔を出した。
先輩はいない。全員揃うと十人くらいだけれど、クラスの出し物もあるし今の時期は全然揃わないと聞く。
銀杏組の出し物はクラス内展示。皆当日遊びたいので手抜きだ。各々一人ずつ飾りたいものを持っていく。
伊黒くんはペットの蛇、実弥はカブトムシ、私は美術部で描いた絵、冨岡くんは何も持っていかないと豪語した。アホだ。
きっとカオスな展示になるだろうな!